親の財産管理はどうすべき?認知症で起こりうるトラブルと認知症に備えた対策について解説
高齢の親の財産管理について方針は決まっていますか。財産管理に備えないまま親が認知症になると、銀行口座が凍結されたり、遺言書を作成できなくなったりといったトラブルにつながる可能性があります。
今回は、親の財産管理に不安を感じている方に向けて、財産管理で起こりうるトラブル、トラブルを避ける方法、認知症対策として有効な財産管理方法などを解説します。親が認知症になった場合の備えとして、ぜひ参考にしてみてください。
多くの人が高齢の親の財産管理に不安を感じている
厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)によると、高齢者の4人に1人が認知症もしくは認知症の予備軍で、高齢化社会の進展に伴いその割合はさらに増加するとされています。
高齢の親を抱えている人は、「親が認知症になったらどうしよう」という不安を感じていることでしょう。親が認知症になると、介護の問題はもちろんのこと、親の財産をどのように管理すべきかという問題も起こります。
親の認知症への不安をやわらげるには、事前の対策が重要です。認知症で起こりうるトラブルを理解し、事前の対策をすることで財産管理への不安は解消できるでしょう。
参照:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の概要|厚生労働省
親が認知症になったときの財産管理で起こりうるトラブル
親が認知症になったときに財産管理の面で起こりうるトラブルとしては、次のものが挙げられます。
- 財産管理ができなくなり詐欺に遭いやすくなる
- 銀行口座が凍結される
- 資産を売却できなくなる
- 遺言書を作成できなくなる
それぞれのトラブルについて、具体的に解説します。
財産管理ができなくなり詐欺に遭いやすくなる
認知症によって判断能力が低下すると、自身の財産を適切に管理できなくなります。
認知症の人が自分で高額の財産を管理していると、高額の商品を購入させられたり、架空の投資に出資させられたりなど詐欺にも遭いやすいでしょう。
親が認知症になってしまったときは、家族や信頼できる第三者が財産を管理するという対策が必要です。
銀行口座が凍結される
親が認知症になると、銀行のATMの操作や窓口での対応ができず、預金を引き出せなくなってしまいます。親の銀行口座でも、判断能力のない親の代わりに子どもが勝手に預金を引き出すことはできません。
銀行は、預金者が認知症であることを知った場合、預金を保護するために口座を凍結することもあります。口座が凍結された場合、親の生活費や入院費についても子どもが立て替えて負担することになるでしょう。
認知症による口座凍結に備えるには、親の判断能力があるうちに子どもが預金口座を管理できるよう対策しておくべきです。
資産を売却できなくなる
認知症で判断能力がなくなると、不動産や自動車などの資産を売却できなくなります。資産を売却する売買契約を締結するには判断能力が必要となるためです。
不要な資産を売却して老後の資金に充てようと考えているのなら、認知症になる前に処分しておくべきです。特に、自宅の処分を検討している場合、認知症になってからでは成年後見の制度を利用しても簡単には処分できなくなってしまいます。
遺言書を作成できなくなる
遺言書の作成には、意思能力が必要です。認知症が進行すると意思能力がないと判断されて、遺言書すら作成できなくなってしまいます。
遺言書が作成できなくなると、遺産の分配は遺産分割協議で決めることになります。遺産分割協議では、被相続人(亡くなった人)の考えていた分割方法になるとは限りません。最悪の場合には、遺産をめぐる相続争いに発展する可能性もあります。
財産管理のトラブルを避けるには財産の把握が重要
認知症による財産管理のトラブルを避けるには、親の財産を把握しておくことが重要です。そのうえで、認知症に備えたマネープランを検討しておくと、認知症になったときの家族の負担を軽減できるでしょう。
老後の資金が足りないときには、不動産や自動車などの資産を売却して現金化すべきです。相続税の負担が大きくなる可能性があるときには、早い段階から生前贈与による相続税対策をしておくことも重要です。
老後の資金をどうするか、相続対策をどうするかという点については、司法書士や税理士などの専門家に相談するのをおすすめします。
親の認知症対策として有効な4つの財産管理方法
認知症対策として有効な財産管理方法には、次の4つがあります。
- 成年後見
- 任意後見
- 財産管理契約
- 家族信託
それぞれの内容と、有効なケースについて解説します。
成年後見
成年後見とは、家庭裁判所の審判で、判断能力が低下した人の財産を管理する人(成年後見人)を選任する制度です。
成年後見は、成年後見人が本人の行為について取消権を持つため、本人の財産を保護するために有効な制度と言えます。ただし、成年後見を利用するには、本人の判断能力が低下していることが必要で、認知症を発症する前の事前対策としては利用できません。
⇒成年後見 | 南九州相続相談センター (kirishima-aira-souzokusodan.com)
任意後見
任意後見とは、本人の判断能力が低下した場合に備えて、財産管理を任意後見人に委託する制度です。任意後見は、本人の判断能力が正常なうちに契約を締結して、判断能力が低下したときに任意後見人による財産管理がスタートします。
任意整理では、管理を委託する財産の範囲や方法を自由に決められます。本人の判断能力が正常なうちに契約を締結するので、認知症に備えた事前の対策として有効な制度と言えるでしょう。ただし、任意後見人には取消権がないため、本人が詐欺被害に遭ってしまったときでも契約を取り消すことはできません。
⇒成年後見 | 南九州相続相談センター (kirishima-aira-souzokusodan.com)
財産管理契約
財産管理契約とは、財産管理を第三者に委託する契約のことです。任意後見とは異なり、契約締結時に効果が発生します。
財産管理契約は、任意の契約であるため契約内容を自由に決められます。ただし、財産管理契約には公的に認められた効力がありません。そのため、財産管理契約を締結していても、預金の引き出しや不動産の売却の場面では本人の意思確認を求められて、認知症を発症したあとに財産管理ができなくなる可能性があります。
家族信託
家族信託は、認知症に備えて、受託者に財産の所有権を移転して、財産管理を任せる契約のことです。
家族信託では、財産管理の内容を自由に設計できます。本人の判断能力があるうちに契約を締結できるので、認知症を発症したあとでも本人の意思に従った財産管理が可能となります。ただし、家族信託を利用できるのは財産管理のみで、任意後見とは異なり本人の療養看護に関する事項は委任できません。
⇒家族信託 | 南九州相続相談センター (kirishima-aira-souzokusodan.com)
親が認知症になる前に財産管理の準備を始めよう
親の財産管理は、認知症になる前に準備を始めることが重要です。親が認知症になってからでは、有効な財産管理の手段が少なくなってしまいます。
親が認知症になる前に対策を始めると、遺言書や生前贈与による相続対策もできますし、任意後見や家族信託で老後の生活に備えることもできます。
当センターは、相続対策や財産管理についての相談を受け付けております。初回の来店相談は無料で、土日祝日の相談もお受けしています(要予約)。
親の財産管理に不安のある方は、お気軽にお問い合わせください。