遠方の実家を相続すると草刈りや管理の手間が心配。実家を相続しない選択はアリかナシか!?
一昔前まで、不動産はもらって嬉しい遺産と考える人が多かったものの、近年は管理の手間や不動産所有者としての責任が生じることなどを心配して敬遠する人が増えています。
当センターでも実際に遠方の実家の相続が予定されているケースでの相談がかなり増えています。
本章では遠方不動産の管理にかかる負担の実際のところや、実家の相続を放棄することの是非について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
遠方にある空き家の管理は実際大変です
様々な事情で遠方の実家(空き家)を相続することになるケースは少なからずあり、空き家を相続した人には所有者としての管理責任が生じることになります。
空き家の所有者に関係してくるリスクとして主なものを挙げてみましょう。
- 建物の腐食が進み倒壊の恐れが生じる
- 庭木の枝が隣地に越境してトラブルになる
- ごみを不法に投棄される
- 害虫や悪臭が発生し近隣に迷惑をかける
etc
空き家は適切に管理しないと劣化、腐食が進み倒壊の恐れが出てきますし、ごみの不法投棄、放火などのリスクが出てきます。
また庭木や雑草が伸びて隣地に越境する、害虫や悪臭の発生源となるなどして近隣に迷惑をかけるといった心配もあります。
何かあれば所有者の責任ですから、管理を怠るわけにはいきません。
そして人が住まない家は途端に朽ちるスピードが増します。
家が朽ちるスピードを少しでも防ぐために定期的に換気や通水をしなければなりませんから、その都度時間と交通費を掛けて実家に帰らなければなりません。
空き家管理の民間サービスもありますが、安くない費用がかかります。
費用は業者やサービス内容によってかなり変わりますが、最低でも月数千円、郵便物の回収や内部の清掃なども頼むとなると1万円以上はかかってきます。
こうした空き家管理の時間や手間、費用を考えると「相続放棄をした方がいいのかな?」と考えるのも無理はないかもしれませんね。
空き家については以下のような選択が可能ですので、状況に応じて適切な方法を検討することになります。
- 売却する、もしくは賃貸に出す
- 管理をしながら維持する
- 相続放棄を考える
売却や利活用が難しく、管理に手間をかけられない場合は相続放棄を検討することになりますが、相続放棄にはデメリットもあります。
次の項で見ていきましょう。
相続放棄をすれば本当に管理の手間がなくなる?デメリットは?
相続放棄をすれば所有者責任や管理の手間から逃れられそうですが、実際には簡単にいきません。
自分が相続放棄をしても、次に相続権を取得する人が実家を管理できるようになるまでは、なお相続放棄をした人が適切に管理をしなければならないことになっていま@す。
自分が最後の相続人だったとしても、裁判所で相続財産管理人の選任手続きが必要になります。
また相続放棄をすると、実家不動産だけでなく現預金など他の遺産もいっさいもらえなくなることに注意が必要です。
それでも、他に目ぼしい遺産がない、親に借金が多く相続すると収支がマイナスになるなど、実家不動産を相続すると不利になる場合は相続放棄の検討が必要になります。
相続するのが有利か、それとも不利なのかは遺産の種類や構成、価額をしっかり調査しないと判断できないので、自信がない場合は専門家に相談する必要があります。
もし相続放棄が必要だとなった場合、相続発生から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを取らなければならず、時期を逸すると相続放棄ができなくなります。
ですから①相続財産の調査・②相続人調査もスピード感を持って進めなければなりません。
もし相続放棄が視野に入る場合、他の遺産にもいっさい手を付けてはいけません。
相続財産に手を付けると相続を承認したとみなされて相続放棄ができなくなるので、この点も注意してください。
- 相続放棄後もすぐに不動産の管理負担がなくなるわけではない
- 相続放棄をすると他の遺産ももらえなくなる
相続放棄には以上のようなデメリットがありますから、本当に相続放棄をしなければならないのか、ケースごとに詳細な検討が必要です。
相続したうえで売却すれば問題ないケースが多い
必要な場合は相続放棄を検討することになりますが、実家を相続したうえで売却すれば管理の手間や所有者責任がなくなりますから、この算段で進めるケースが実際のところ多くなっています。
不動産を売ればまとまった現金になりますから、生活費の他に様々な用途に利用できます。
ただ相続事案の特徴として築古となっている物件が多く、特に戸建ての築古物件は買い手が付きにくいことは知っておく必要があります。
通常は3ヶ月から半年ほどのスパンを見積もって買い手探しを行いますが、ケースによってはそれよりも長くかかることもあります。
買い手が付くまではやはり管理の手間を取られることになるので、実家不動産の所在地や老築度合いなどを考慮し、本当に売れそうかどうかを精査する必要があります。
そもそも売れそうな物件なのか、売れそうな場合は価格がいくらになりそうか、また買い手が付くまでにどれくらいの時間がかかりそうかの見積もりは不動産の専門家でないと判断できません。
相続を予定している実家が問題なく売れそうかどうか、相続発生前から余裕をもって不動産会社に相談しておきましょう。
特に売却価格の予想は重要で、仮に売れそうな場合でも、売却価格よりも多くの借金が残されている場合は結局収支がマイナスになります。
収支がマイナスになるならやはり相続放棄の検討が必要になります。
売却が困難な場合の事前対処法
事前相談をした結果、買い手を見つけるのが困難な物件であることが分かったとしましょう。
売れそうにないと分かれば相続放棄をすることもできますが、そうすると他の遺産もいっさいもらえなくなります。
売れそうにないことが分かっている場合、実家不動産以外の資産を生前贈与の形で相続人予定者に渡しておき、相続が起きたら相続放棄をして実家の承継を免れるという裏技も検討できます。
ただし税金面では贈与税の心配があるので、できるだけ有利に進めるには贈与税の基礎控除を活用するなどして、十分に時間をかけて準備を進める必要があります。
生前贈与による相続対策については相続税方面で改正があり、将来的に対処が難しくなることが予想されますが、現状でも相続発生から最低でも3年以上前から計画を立てて実行する必要があるなど、難度はかなり高いものになります。
相続に関する法律や制度に詳しい専門家のアドバイスの元で進めないと思わぬ落とし穴にはまる危険があるので注意してください。
なお、要らない不動産を相続しなくて済むような事前サポートや、新しくできた国庫帰属制度の利用についても当センターではご相談をお受けしております。
不動産の国庫帰属制度は一定の条件の下で不要な土地を手放せる制度ですが、手続きにはかなり手間を要します。
当センターでは手続きの代行も可能ですので、ぜひご相談くださいませ。
どのケースでも実家の相続は時間に余裕を持った対応が必要
実家を相続する、しないどちらにしても、その判断をするには様々な情報を調べないといけません。
実家不動産の価値や売却の可能性、被相続人が残した遺産の構成や価額、あるいは生前贈与の検討など、不動産以外にも考えるべきことがたくさんあります。
ですから、遠方の実家の相続が予定されている場合は相続の発生前に充分な余裕をもって専門家に対処の相談をしていただきたいと思います。
相談する側として大変なのは、不動産の査定や売却などの相談は不動産会社や土地家屋調査士、相続財産の調査や生前贈与の検討など処々の手続きや法律面は行政書士あるいは司法書士、税金面は税理士など、相談の内容ごとに相談先が分かれることです。
個別に専門家の事務所を訪ねていたのでは、相談するだけで貴重な時間を浪費してしまいますし、相談先ごとに同じ話を何度もしなければならずストレスです。
ですから、相続不動産に関する相談はワンストップで受け付けてくれる所を探すのがベストです。
当センターは相続不動産の問題にワンストップで対処できるよう、不動産の専門家はもちろん、各種手続きや法務、税務の専門家が連携して対応する体制を整えております。
同じ話を何度もする必要はなく、相続不動産に関する不安や事前に取るべき行動、相続発生後に必要な手続きまで、全ての相談をまとめてしていただけます。
相続不動産の問題を数多く解決してきた実績がございますので、ぜひ安心してご相談くださいませ。
まとめ
本章では遠方の実家を相続する場合にかかる管理の手間や所有者の責任、相続放棄することの是非などについて見てきました。
空き家となる実家を相続すると所有者となる相続人にかなりの負担が発生します。
ほとんどのケースでは売却が可能ですから、事前に不動産の専門家に売却の可能性や予想価格などについて相談しておくのがお勧めです。
実家の市場価格は自分である程度の相場を調べることも可能ではありますが、手間がかかることと、より正確な価値判断はプロに任せた方が確実です。
事前にプロに相談することで、相続すべきか否かの判断ができ、安心して相続発生に備えられます。
当センターにご相談いただくことで、相続放棄が必要な場合も、そうでない場合も、どちらのケースにも的確に対応できる準備を整えていただくことができますので、ぜひご活用いただければと思います。