相続した不動産を売却するには?手続き、税金、節税対策を解説
はじめに
相続した不動産を売却したとき、税金がどれだけかかるか気になりますね。
できるだけ減らせるように節税対策をたてたいところです。
本記事では、相続した不動産の売却手続き、売却で発生する税金、節税対策について解説します。
まず相続した不動産の売却手続きから見ていきましょう。
相続した不動産の売却手続き
相続発生から相続税の申告、納税まで
1 遺言書の確認
被相続人が亡くなったら、まず遺言書の有無を確認します。
遺言書があった場合、その内容にしたがって遺産を処理しなければならないからです。
2 遺産の確認
次は遺産の内容の確認です。
プラスの財産(現金預貯金、有価証券、不動産など)、マイナスの財産(借入金、他人の借金の保証債務など)がそれぞれいくらあるか把握しましょう。
金額によって次の選択肢があります。
単純承認(被相続人のプラスの財産、マイナスの財産すべて相続すること)
プラスの財産額がマイナスの財産額を超えている場合は単純承認を選ぶとよいでしょう。
相続放棄(被相続人のプラスの財産、マイナスの財産すべて相続しないこと)
マイナスの財産額がプラスの財産額を超えている場合は相続放棄を選ぶとよいでしょう。
3 遺産分割協議(相続人間で遺産の分割を決める話し合い)
4 名義変更
遺産分割協議で不動産の引き継ぎ人が決まったら、相続登記により不動産の所有権を移転します。
相続登記の義務化は決定され、令和5年4月1日から実施されます。
5 相続税の申告、納税
相続税申告書の提出期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
例えば知った日を令和5年4月30日とすると、提出期限は令和6年2月30日になります。
相続税に関するコラムはこちら↓
相続税とはどのようなものなのでしょうか?
相続後から売却まで
6 不動産の価格査定
価格査定は、複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。
なぜなら査定金額は不動産会社が独自に見積もった価格であるため、査定する不動産会社によって査定金額は異なるからです。
7 不動産会社と媒介契約の締結
媒介契約とは、不動産会社に不動産の買主を探してもらうために売主と不動産会社が結ぶ契約です。
8 売却活動開始
媒介契約が締結されると、不動産会社は広告、現地案内などの営業活動を始めます。
9 買主と売買契約の締結
売買契約締結の際に、買主は売主に手付金を支払います。
手付金は残代金支払いのときに、売買代金の一部に充当されます。
10 売却代金の受領、不動産の引渡し
売却代金の受領、不動産の引渡しは所有権移転登記申請と合わせて行われます。
所有権移転登記申請手続きは買主にとって必要なものなので、買主側の不動産業者が中心になって司法書士と打ち合わせをします。
つぎに、「売却で発生する税金はいくらになるのか」気になるところであり、問い合わせも多数いただいております。ここでは節税対策についても紹介していきます。
相続した不動産売却による税金
相続した不動産売却に関する税金は印紙税、譲渡所得税です。
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書を作成する際にかかる税金です。
税額は契約金額によって決まります。
仮に契約金額が1,000万円超5,000万円以下であれば、印紙税額は1万円です。
譲渡所得税(所得税・住民税)
譲渡所得税とは、不動産売却により発生した譲渡所得にかかる税金です。
税率は次のとおりです。
税率
売却した年の1月1日現在で所有期間5年以下の不動産を売却した場合
→所得税税率30.63%+住民税税率9%=39.63%
売却した年の1月1日現在で所有期間5年超の不動産を売却した場合
→所得税税率15.315%+住民税税率5%=20.315%
譲渡所得の計算方法
計算式は次のとおりです。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡所得とは、不動産売却により発生した利益のことです。
収入金額とは、不動産を売却した金額のことです。
取得費とは売却した不動産を購入したときの金額のことです。
*相続した不動産の取得費は、被相続人が購入したときの金額になります。
購入したときの金額が不明の場合は、概算取得費で計算します。
概算取得費=売却による収入金額×5%
仮に売却による収入金額が100万円であれば、
概算取得費=100万円×5%=5万円 となります。
譲渡費用とは、不動産を売却するための必要費用です。
たとえば仲介手数料、売買契約書の印紙代、建物付き土地を売却する際の建物取り壊し費用などです。
特別控除については、次の節税対策の中で説明します。
相続した不動産売却での節税対策
ここまで相続した不動産売却で発生する税金について解説してきました。
税金がかかることは避けられませんが、少しでも安くしたいですね。
そのための主な節税対策は次の4つです。
- 取得費加算の特例
- 居住用不動産3,000万円の特別控除
- 空き家に係る譲渡所得の特別控除
- 低未利用土地を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
それぞれ詳しく解説します。
取得費加算の特例
効果
相続した不動産を売却したときに相続税の額を取得費に加算することにより、譲渡所得を減らして譲渡所得税を減額できます。
譲渡所得税は、不動産売却により発生した譲渡所得にかかる税金です。
譲渡所得の計算式は次のとおりです。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
仮に、
収入金額:100万円
取得費:10万円
譲渡費用:20万円
特別控除:30万円 相続税:40万円
とします。
本特例が適用されない場合の譲渡所得
=100万円-(10万円+20万円)-30万円
=40万円
本特例が適用される場合の譲渡所得
=100万円-{(10万円+40万円)+20万円}-30万円
=0円
このように特例の適用で譲渡所得を減額できます。
譲渡所得を減額できれば、譲渡所得税を節税できます。
要件
1相続により不動産を取得した人が売却すること
2不動産を取得した人が相続税を支払っていること
3相続が発生した日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に不動産を売却したこと
=相続してから3年10か月以内に売却したこと
*相続税の申告期限は相続が発生した日の翌日から10か月以内
居住用不動産3,000万円の特別控除
効果
個人が居住用不動産を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。
譲渡所得が3,000万円超であれば3,000万円控除でき、3,000万円以下であればその金額すべてが控除できます。
上記の例の場合、特別控除が認められれば譲渡所得はゼロになります。
本特例が適用される場合の譲渡所得
この場合、譲渡所得は70万円になります。
譲渡所得=100万円-(10万円+20万円)=70万円
70万円<3,000万円
したがって特別控除も70万円になり、譲渡所得税はゼロになります。
主な要件
1住んでいる家屋を売却すること、もしくは家屋とともにその敷地を売却すること。
以前に住んでいた家屋や敷地などを売却する場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
2 売り手と買い手が特別な関係でないこと
*特別な関係とは、親子、夫婦、生計を一にする親族などを指します。
3 売却した年の前年、前々年に本特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例の適用を受けていないこと
4 売却した年、その前年、前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
空き家に係る譲渡所得の特別控除
効果
下記の要件を満たす家屋を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。
一人暮らしの老人が住んでいた新耐震基準を満たさない一戸建てを想定した制度といえます。
要件
1売却した家屋が昭和56年3月31日以前に建築されたものであること
2売却した家屋が区分所有建物(マンション、アパート)でないこと
3相続開始の直前において、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
*被相続人が要介護認定を受け、居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた場合も本控除の対象になります。
4相続してから売却するまでに家屋を賃貸したり、居住していないこと
5家屋を取り壊して更地して土地のみを売却するか、家屋を売却する際には一定の耐震基準を満たすこと
6相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
7売却代金が1億円以下であること
低未利用土地を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
効果
令和2年7月1日から令和4年12月31日までに都市計画区域内の一定の未利用土地を譲渡価額500万円以下で売却した場合、その譲渡所得から100万円を控除できます。
主な要件
1売却した土地等が都市計画区域内の一定の未利用土地であること
2売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
3売り手と買い手が特別な関係でないこと
*特別な関係とは、親子、夫婦、生計を一にする親族などを指します。
4土地等の売却価額と低未利用土地の上の建物の売却価額の合計金額が500万円以下であること
まとめ
ここまで相続不動産の売却手続き、売却で発生する税金、節税対策について解説してきました。
むずかしいと感じる方も多いようです。
確かに登記、節税対策などを行うためには専門知識が必要です。
一般の人がこれらを行うことは、かなり困難でしょう。
当センターには、常時司法書士、税理士などの専門家が滞在しておりますので多岐にわたる手続き・問題にワンストップで対処できます。
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