土地の相続手続き・活用方法教えます
一.はじめに
相続、それは突然やって来ます。仮に亡くなった方をAさんとしましょう。 「Aさんが危ない、至急来てください!」そのような電話が病院や施設からいきなりやって来ます。そして慌てふためくうちにAさんが死亡、短い時間の中で葬式の手順やどこに連絡するのかを決めていかなければなりません。悲しむ間もなく、次にやってくるのが「Aさんの遺産をどうするのか?」という問題です。遺産といっても色々あります。現金や預金といったものから土地や建物といった不動産まであらゆるものがあります。その中でも、取り扱いの難しいのが不動産ではないでしょうか?ここでは、土地の相続を中心に見ていきます。
二.相続の手続き
1.相続人の順位と割合
まず、相続の手続きについて見ていきます。手順としては、遺言があれば何よりもその書面が優先されます。遺言の形式的な条件(日付が入っている、自筆で名前を書いているなど)が整っていればその遺言通りの効力が発揮されます。その中で誰が土地を相続するのかの記載がある場合は、そこに記載された方が土地を受け継ぎます。では、遺言に記載がない、または遺言そのものがない場合はどうなるのでしょうか?前提として、法定の相続分について見ていきます。
第一順位 | 子 |
第二順位 | 直系尊属(父母や祖父母) |
第三順位 | 兄弟姉妹 |
これが相続人の順位です。なお、配偶者は常に相続人です。子がいれば、他にAさんの父母や兄弟姉妹がいてもその方達は相続人になれません。次に相続割合について見ていきます。
配偶者と子 | 1/2・1/2 |
配偶者と直系尊属 | 2/3・1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4・1/4 |
以上のような割合で相続分が決まっていきます。ここで遺産分割などの手続きを踏まなければ、相続人は以上の割合で相続分を取得します。これが土地であれば、1つの土地について相続人全員で法定相続分の割合で引き継ぐことになります。仮にAさんの相続人が妻B、子のCとDであれば、A1/2、BとCが各1/4ずつの割合で共有することになります。ただ、これですと管理が大変ですよね。もし相続した土地を近々売却することが決まっているのであれば、法定相続分の割合で登記をすれば、その割合に見合ったお金が入りますので問題は起こりにくいでしょう。
2.遺産分割とは
問題となるのは、売却しないような場合です。一人で決められないことが多々出てくるので、もし長い年月の間で相続人同士の仲が悪くなったような場合は何も決められない事態が起こりえます。固定資産税等の税金は誰が負担するのかといった問題も起こるでしょう。このような場合、遺産分割をして誰が所有者となるのかを決める必要があります。遺産分割とは、法定相続分で取得した遺産を最終的に誰が受け継ぐのかを決める場です。この遺産分割は必ず相続人全員で行わなければなりません。全員が必ず同じ場所に集まってする必要まではありませんが、相続人全員の署名と実印での押印(印鑑証明書付き)がなければ、遺産分割協議書とは評価できません。
3.相続手続きの進め方
では、相続の手続きはどのように進むのでしょうか?まずは遺言などがないのかを調べ、次に戸籍を集めていきます。戸籍と一言で言っても現在戸籍・除籍・原戸籍と3つの種類があり、それらを被相続人の死亡から出生まで取り寄せていきます。戸籍は一通の書類で完結することはあまりなく、実際は何通かにまたがることがほとんどです。これは相続人を把握するために行います。もし相続人の誰も知らない「隠し子」のような存在があれば、その人を飛ばして遺産分割を行うわけにはいかないからです。戸籍は、その裏付け資料という意味合いがあります。そして、取得する遺産が決まり、遺産分割協議書への署名押印が終わると法務局で土地の名義変更などを行います。
三.相続手続きのポイント
ここまで、相続の手続きの概要について見てきました。では、土地や相続についてよく質問のあるところを紹介します。
Q1・相続の手続きについて期限はあるのですか?
結論から言いますと、2021年時点では土地の名義変更については期限がありません。なお相続税の申告は被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内、相続放棄をする場合は被相続人の死亡を知った日から3ヶ月という制約はあります。ただ現在、法改正が進んでいて相続登記にも期限が設けられる方向にあります。2024年度に施行の予定です。具体的には相続発生から3年以内に名義変更することが義務づけられ、もし3年を過ぎると10万円以下の過料を納めなければならなくなります。
Q2・土地の名義を変えないとどうなるの?
実際に土地の名義を変更しなくても、その土地を利用し続けることはできます。ただ、人に貸す・他人に売却する・お金を借りて担保を設定するといったような場合は名義を変えなければいけません。相続の手続きが面倒で放置するという話はよく耳にしますが、その後に土地の買収などの話が出て、そのときには相続人が数十人に膨れ上がっていたとなると手続きが難航するのは明らかです。時間もかかりますし、費用もかさんでしまいます。
Q3・土地を国や自治体に寄付できるの?
道路など不特定多数の人が利用する状況の私有地であれば、市町村が寄付という形で受け取ることもありますが、実際は土地の寄付は拒否されることがほとんどでした。法律上、相続人が不存在であれば被相続人の遺産は国庫に帰属するとなっていますが、国も土地は売却するなどお金に換えて帰属させる方向で運用を行っています。昨今、相続が発生したものの放置されている不動産が増えてきた実情を踏まえ、国庫に帰属できる制度が導入されようとしています。2023年頃に運用が始まりそうですが、この制度を利用するとしても土地に担保がついていない、建物がないなどの条件があります。
四.相続対策と取得した土地の活用方法
では、次に相続発生前に遺産となるものの中に土地がある場合、どのように対処すればいいのか?実際に相続で取得した土地をどのように活用すればいいのか?について見ていきます。なお、土地と一言でいっても、その場所や利用状況で千差万別です。全てのケースでこれらが当てはまるわけではありませんので、ご了承ください。
①使わない土地について
相続発生前の話になりますが、所有している土地が複数あって使っていないものがあれば、売却するのも一つの方法でしょう。売却すると譲渡所得などの税金が発生しますが、相続税を納付するための原資にすることもできますので、利用していなくて売却できる土地がありましたら検討する余地はあります。ただし、「相続税対策といえば不動産」と言われるように、不動産を売却して現金化するよりも、不動産のままで相続した方が、相続税の計算上有利になることが多いことから、弊所のような相続税対策に詳しい専門家に相談して検討されることをお勧めします。
②保険を上手に活用する
遺産分割で土地を相続するとなると、相続した人は数字上は多くの遺産を取得したことになります。とすると、他の相続人との間で不公平感が残り、相続トラブルに発展することもあり得ます。このような不公平感を残さないようにするためにも、土地を相続しない他の相続人には生命保険金の受取人に指定しておくなどの方法を用いて、できるだけ公平になるように対策しておくことも有効です。
③取得した土地が農地や山林の場合
相続で受け継いだ土地が宅地で収益を生むようなものであれば、問題はないでしょう。ですが、実際は農地や山林で、場合によってはどこにある土地なのかわからないといったケースも少なくありません。農地であれば放置していると農業委員会から時々通知が届いて、手入れを促されます。売却して手放せればベストですが、そうもいかない土地であれば誰かに貸すという方法があります。自身に農業経験がある場合は体験農園などを開くという選択肢もありますし、それが難しいのであれば農業経験のある人に耕してもらうという選択肢もあります。または2023年頃から運用が開始される国庫納付制度を利用するという方法もあるでしょう。
五.終わりに
これまで、土地について相続を中心に見てきました。上手に活用できれば大きな収益を生みますが、評価が高いのにも関わらず利活用がうまくできない、相続トラブルの原因になるなど、マイナスになる要素も多分に含んでいるのが土地です。家族内で話し合い、相続に強い専門家に相談して対策をしておくことで、相続トラブルを回避することができます。弊所は相続に強い専門家が適切にアドバイスいたします。どんな些細なことでも無料にて相談が可能です。いつでもお気軽にご相談ください。