親を介護されている方必見!遺産相続トラブルを避けるために知っておくべきこと

ご高齢となった親を介護するのは、多くの負担や苦労を伴うものです。
とても他のことを考える余裕などない方も多いのではないでしょうか。

しかし、その後には遺産相続の問題があることを忘れてはなりません。
特に遺言書がない場合、相続人同士のトラブルが引き起こりやすいため注意が必要です。

そこで本記事では、今、まさに介護をしている方々が将来のトラブルを避けるために何を知っておくべきか、専門家目線で詳しく解説していきます。

介護されている親が亡くなったときに起こりやすいトラブル
具体例: 遺言書がないことで兄弟間に生じる遺産相続トラブル

たとえば、三人兄弟のAさん、Bさん、Cさんがいるとします。
長男のAさんが一人で母親の介護をしていましたが、母親が亡くなった際、遺言書がなかったためにトラブルが発生しました。

母親の遺産は実家の家と少額の預金のみだったため、資産価値の高い実家について誰が相続するかで争いが起きてしまったのです。

長男のAさんは、自身が介護をしていたことを理由に実家を相続したいと主張しましたが、次男のBさんと三男のCさんはそれに納得しませんでした。

Bさんは法定相続分に則って平等に分けるべきだと主張し、Cさんは実家を売却してそのお金を分配することを提案しました。

結局、兄弟間での話し合いは決裂し、最終的には裁判沙汰にまで発展してしまいました。

なぜこのようなトラブルが起きたのか、どうすれば防げたのか
【トラブルの原因】

このようなトラブルの主な原因は、遺言書が存在しなかったことにあります。

遺言書がない場合、法律に基づいた遺産分割協議を行うのが通常です。
遺産分割協議とは、相続人全員が参加し、遺産の行方について話し合うことです。

しかし、各々の兄弟の考えや感情が絡み合ってしまうと話し合いは難航し、今回のようなトラブルが起こります。

また、介護を担当していた家族が他の家族よりも多くの権利(寄与分)を主張する場合、その介護に対する貢献度を他の兄弟がどう評価するかで意見が分かれることもあります。

介護の負担を理解し、感謝する気持ちがあっても、遺産相続となるとお金の問題です。
とても冷静に考えられなくなってしまうのも無理はありません。

上記の具体例では、最終的に裁判にまで発展しています。
裁判となると年単位で揉めるケースは珍しくないため、心身ともに大変な負担となってしまうことから、避けるに越したことはありません。

【トラブルを防ぐための対策】

では、こうしたトラブルを避けるには、どうすればよかったのでしょうか。
以下にて、具体的な3つの対策についてご紹介します。

①遺言書を作成する

もっとも効果的な対策は、生前に遺言書を作成することです。
遺言書に誰に何を相続させるかを記載することで、後のトラブルを防ぐことができます。

ただし、遺言書を作成する場合は、法律に則り不備のないものを作成しなければなりません。

もし、不備のある遺言書を作成してしまえば、内容が無効になってしまうだけでなく、さらなる争いを引き起こすきっかけになりかねないのです。

また、内容が法的に無効であったとしても、遺言書という形式で残っている以上、本人の意思であると主張したくなるのも無理はありません。

遺言書の内容で有利になる者、不利になる者がいれば、争いは避けられないのです。

こうしたトラブルを引き起こさないためにも、遺言書は専門家に作成を依頼する、公証役場を利用するなど、適正な方法で作成することが重要です。

②家族会議を開催する

定期的に家族会議を開き、親の介護の現状や遺産相続について話し合うことも重要です。
全員が現状を理解し、意見を共有することで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。

また、介護を受けているご両親が認知症の疑いをかけられてしまう前に、自身の財産をどのように譲りたいと考えているのかなど、本人の意思確認をしておくことも重要です。

なお、介護を担当している家族は、財産状況を把握していることが多いため、それを他の家族と共有することも、不要な争いを引き起こさないためには有効です。

家族間の疑心暗鬼は、相続トラブルの引き金です。
相続人全員が現状を理解し、共有するのが理想的といえるでしょう。

③専門家に相談・依頼する

司法書士や弁護士など、専門家に相談することも有効です。

専門家は法律的な見地から、個々の状況に応じた適切な遺言書の作成や遺産分割の方法についてアドバイスしてくれます。

現在、インターネットを利用すれば多くの情報を引き出せるようになりました。
しかし、ご自身と全く同じ状況の方は、まずこの世の中に存在しません。

似通ったケースはあったとしても、すべての情報を鵜呑みにしてしまうと、間違いやトラブルを引き起こす原因になりかねないため注意してください。

個々の状況に応じて、対策は異なります。
インターネットを通じて情報を引き出すことは有効ですが、現在のご自身の状況を専門家に相談し、適切なアドバイスをもらうことを推奨します。

今、親を介護している方が今後できること

では、今まさに親を介護している方は、今後どうすべきなのでしょうか。
以下にて、今後できる4つのことをご紹介します。

①親と話し合う

まずは、親と率直に話し合い、遺産相続についての考えを確認しましょう。
親がどのような遺産分割を望んでいるのかを知ることは重要です。

②遺言書の作成を促す

親がまだまだ元気なうちは提案しがたいものですが、介護が必要な状況下となれば、遺言書の作成を促すのも必要なことです。

昨今は「終活」というワードをよく見かけるようになりました。
話を切り出すきっかけにしてみるのも良いでしょう。

③家族全員で情報の共有

遺言書の内容や介護の現状を家族全員で共有することも大切です。
定期的に家族会議を開くなどし、全員が同じ情報を持ち、理解することで、後の誤解やトラブルを防ぐことができます。

④専門家のサポートを受ける

司法書士や弁護士など、相続問題に詳しい専門家に相談することも検討しましょう。
専門家のサポートを受けることで、あらかじめトラブルを防ぐことが可能です。

介護していない人ができること

親の介護をしていない家族も、遺産相続トラブルを避けるためにできることがあります。
以下にて、介護していない人でもできることを4つご紹介します。

①定期的なコミュニケーション

介護をしている家族と定期的に連絡を取り合い、現状の情報を共有することが大切です。

介護の状況や親の健康状態について理解を深めることで、家族間の信頼関係が築かれ、遺産相続の際に不必要な誤解やトラブルを防ぐことができます。

②親の意思を確認する

親の考えや希望を確認し、それを尊重することが重要です。

親がどのように財産を分けたいのか、遺言書を作成する意思があるかなどを尋ねることで、親の意向を把握してみましょう。
これにより、遺産相続の際に親の意志を反映した公平な分配が実現しやすくなります。

③家族会議の積極的な参加

定期的な家族会議に積極的に参加しましょう。

会議の場で介護の状況や財産の分配について意見を交換することで、全員が現状を理解し、納得した上での合意形成が可能となります。

④感謝の気持ちを表す

介護を担っている家族に対して感謝の気持ちを示すことも重要です。

労力を惜しまず介護を続けている家族に対して、ねぎらいや感謝の言葉を伝えることで、家族間の絆が深まり、遺産相続の際にも円満な話し合いが行いやすくなります。

まとめ

家族を介護することは大変な労力を伴います。
しかし、その後の遺産相続の問題は早い段階で対策しておくべきです。

たとえば、遺言書の作成や家族会議の開催、専門家への相談など、事前にできる対策を講じることで、後のトラブルを防ぐことができます。

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