内縁の妻(夫)の認知された子と離婚した先の子で土地の相続をしたらどうなる?相続放棄すべきなのか?
内縁のパートナーが亡くなってしまった場合、土地などを含めた財産の相続についてトラブルになってしまうケースは珍しくありません。
とくに認知された子供と離婚した先に子供がいる場合、どちらの相続順位が高くなるのかという点がトラブルになりやすいです。
トラブルを回避するために相続放棄をするという結果になってしまうこともあるでしょう。
ここでは、内縁の妻(夫)に認知された子供と離婚した先の子供の相続の順位や相続トラブルの対処法についてご紹介します。
内縁の妻(夫)の財産相続について
内縁とは、婚姻届けを提出していないものの夫婦と同じように生活を共にしているパートナーを指します。
内縁の妻(夫)は土地などの財産を相続できる権利があるのでしょうか?
内縁の妻(夫)に相続権はない
内縁の場合、住民票の世帯主との続柄を記載する部分へ「妻(未届)」や「夫(未届)」と記載する手続きがあります。
離婚の慰謝料なども法律婚と同様の扱いになるなど、内縁関係も法律婚と同等の権利を受けられることも多いです。
ただし、相続権に関しては内縁の妻(夫)には認められていません。
そのため、内縁の妻(夫)は法定相続人になることができず、長年一緒に財産を築いてきたとしても財産を受け取ることができないことになります。
遺言で遺贈を定められていれば相続できる
遺言書は被相続人の意思が反映されているため、法定相続よりも優先されます。
遺言書で財産を贈与することを「遺贈」と呼び、被相続人は自由に遺贈する相手を選べます。
内縁の妻(夫)に相続権はありませんが、遺贈を受けた場合は受遺者(遺贈を受けた人)になることが可能です。
ただし、被相続人に法定相続人がいる場合は、法定相続人が本来受け取るべき相続財産である「遺留分」を請求されることがあります。
そうなれば、内縁の妻(夫)は遺留分を支払わなければならない可能性があります。
特別縁故者ならば遺産を受け取れる
内縁の妻(夫)が被相続人の晩年の身の回りの世話をしていた場合、「特別縁故者」として財産を受け取れる可能性があります。
特別縁故者は、次のような要件を満たした場合に認められます。
- 被相続人に法定相続人がいない、なおかつ遺言書がない
- 被相続人と生計が同じだった
- 被相続人と特別の縁故だった
- 被相続人の療養看護に献身的に携わった
特別縁故者として財産を受け取るには、家庭裁判所への申立てが必要です。
内縁の妻(夫)との間の子供の相続権について
内縁の妻(夫)には相続権がありませんが、被相続人との間に子供がいる場合はどのようになるのでしょうか?
内縁の妻(夫)との間の子供の相続権についてご紹介します。
認知されていれば相続権が認められる
内縁の妻(夫)との間の子供の場合、一定の条件を満たしていれば相続権が認められます。
その条件は、「認知」の有無です。
内縁の夫が子供を認知していなければ相続権は認められませんが、認知している場合には相続人として認められます。
認知は父親の死後でも可能
子供の父親であることを認める「認知」の方法は、大きくわけると3種類があります。
父親が生前に届出る「任意認知」と、遺言書の中で認知する意思を記載する「遺言認知」、そして父親の死後に裁判で認知の訴訟を提起する「死後認知」です。
死後認知の場合、父親の死後3年以内であれば裁判が可能です。
認知された子供と離婚した先の子供の相続順位と相続分について
パートナーが内縁関係になる前に、法律婚をして離婚しているケースがあります。
その離婚した先の子供がいる場合、内縁の妻(夫)の間の子供との相続順位や相続分の割合はどのようになるのでしょうか?
相続人の順位
法定相続人の範囲と順位に関しては、次のように法律で定められています。
- 配偶者は常に相続人
- 第1順位:被相続人の子供
- 第2順位:被相続人の親
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹
上記のようになり、認知された子供と離婚した先の子供の場合、第1順位の被相続人の子供に該当します。
順位に関しては認知された子供も離婚した先の子供も同様の扱いです。
法定相続分の割合
法定相続分の割合に関しても法律で定められています。
- 配偶者と子供が相続する場合:配偶者1/2、子供1/2
- 配偶者と被相続人の親が相続する場合:配偶者2/3、親1/3
- 配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続する場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
認知された子供と離婚した先の子供は、法定相続分の割合でも同等の扱いになります。
以前は非嫡出子(認知された子供)と嫡出子(法律婚の間で生まれた子供)では扱いが異なり、非嫡出子の相続割合は嫡出子の1/2であることが法律で定められていました。
しかし、平成25年の民法改正により、 現在は非嫡出子と嫡出子の相続分は同等になっています。
土地を相続する場合、どうなるのか?
相続する財産が現金だけであれば分割しやすいですが、土地が財産に含まれているようなケースもあります。
認知された子供と離婚した先の子供が土地を相続する場合、どのように分割すればいいのでしょうか?
土地の遺産分割方法
1つの土地を遺産分割する場合、次の4種類の方法の内のいずれかの方法で分割することになります。
- 現物分割
広大な土地の場合であれば、土地を分筆してそれぞれの相続人が取得します。
ただし、物理的に均等に分けることが難しいため、トラブルになってしまうことも多いです。
- 代償分割
特定の人物が土地をそのまま取得する代わりに、その対価として他の相続人にお金を支払う方法です。
その土地の不動産に住み続けたい等の理由がある場合に有効でしょう。
- 換価分割
土地を売却し、現金を相続人で分ける方法です。
- 共有分割
土地を複数の相続人の共有名義にし、相続する方法です。
土地を共有すれば、売却や建築する際に共有者全員の同意が必要になってしまいます。
土地を相続放棄すれば他の財産も放棄することになる
内縁の妻(夫)との間の認知された子供と離婚先の子供で土地を相続するとなれば、分割でトラブルになってしまうことが予想されます。
トラブルを避けるために土地の相続は放棄したいと考える方もいるでしょう。
しかし、相続放棄をすれば土地だけではなく、全ての財産の相続を放棄することになりかねます。
そのため、遺産分割協議においてしっかりと双方で話し合って決めることが大切です。
当事者同士で協議することが難しい場合には、専門家を通して交渉を進めることをおすすめします。
土地の相続で認知された子供と離婚した先の子供がトラブルにならないようにするためにできること
土地を含めた財産の相続では、内縁の妻(夫)の子供と離婚した先の子供がトラブルになってしまい、一方の子供が相続放棄してしまうというケースも少なくありません。
相続でのトラブルを避けるためには、生前に次の方法で対処しておくことをおすすめします。
生前贈与する
内縁の妻(夫)と認知した子供に財産や土地を相続したいという場合、子供に相続権があっても内縁の妻(夫)には相続権がありません。
この場合、生前に贈与するという方法があります。
生前贈与は相続権の有無に関係なく行うことができます。
ただし、年間の贈与額が110万円を超えるばあいは贈与税の申告が必要になるため注意が必要です。
遺言書を作成する
遺言書は被相続人の意思を反映した遺産の分割が可能です。
遺言書は法定相続よりも優先されるため、認知された子供と離婚した先の子供が財産の分割でトラブルになることを避けられるでしょう。
遺言書を作成する際には「公正証書遺言」として作成すれば、効力のある遺言書を残すことができます。
まとめ
内縁の妻(夫)には相続権がないものの、認知された子供と離婚した先の子供は同等の扱いで法定相続人になることができます。
しかし、土地の遺産分割になるとトラブルになってしまう恐れがあります。
内縁の妻(夫)や認知された子供にしっかり財産を残したい場合や、子供同士の相続トラブルを避けたい場合には、生前に遺言書を作成するなどして対策しておくことが大切です。
遺言書の作成や生前贈与について疑問や不安がある時はお気軽にお問い合わせください。