相続を原因とする不動産の名義変更について、よくある注意点を解説

相続人が亡くなって相続が発生し、遺産の中に不動産がある場合は、相続登記として不動産の名義変更の手続きが必要です。
ところが、「2年前に亡くなった父の土地を相続したら、実は登記の名義人が父の母方の祖父だった」など、名義変更の手続きが難しくなるケースもあるのです。
そこで今回は、相続を原因とする不動産の名義変更に関連する、よくある注意点について解説します。

数次相続における不動産登記の名義変更

被相続人が亡くなって相続が開始したところ、被相続人から相続人への不動産登記の名義変更をしないうちに、相続人が亡くなって新たに相続が発生することを、数次相続といいます。
たとえば、曽祖父が亡くなって第1の相続が発生し、祖父が相続人となったとします。
曽祖父の土地を祖父が相続したものの、相続登記によって土地の名義を曽祖父から祖父に変更しないうちに、祖父が亡くなって第2の相続が発生するのが、数次相続です。
不動産の名義変更を何世代もしないまま数次相続が発生した場合、「亡くなった父の土地を相続してみたら、土地の登記名義が父の母方の祖父だった」という状況になる可能性があるのです。
不動産の名義変更をしないままで数次相続が発生した場合、最初の相続から最後の相続まで、不動産登記の名義変更を複数回しなければならないのが原則であり、手間も費用もかかってしまいます。

数次相続でも一回の名義変更で済む場合がある

例外として、最後の相続以外が単独相続の場合には、数次相続においても一回の名義変更だけで済ませることができ、これを中間省略登記といいます。
たとえば、以下の場合には中間省略登記が認められます。

  1. 曽祖父が亡くなって、祖父が単独で土地甲を相続した(第1次相続)
  2. 祖父が亡くなって、母が単独で土地甲を相続した(第2次相続)
  3. 母が亡くなって、父(母の夫)が単独で土地甲を相続した(第3次相続)
  4. 父が亡くなって、土地甲を長男が共同相続した(最終相続)

上記の場合、第1次〜第3次の相続全てが単独相続なので、中間の相続人に登記をせず、一回の相続登記だけで曽祖父の名義から長男の名義に変更することができます。

相続人がわからない場合はどうやって調べる?

遺言書がなく相続人が複数いる場合、不動産の相続登記をする前提として、遺産分割協議をしなければなりません。
遺産分割協議とは、遺産をどのように分割するかについて、相続人で協議をして決める手続きです。
遺産分割協議が成立するには、相続人全員が同意しなければなりません。
一人でも相続人を欠くと、遺産分割協議をしても無効になってしまうので、遺産分割協議をするにあたっては誰が相続人かを確定する必要があります。
身内なのだから誰が相続人かは把握できていると思われるかもしれませんが、被相続人に隠し子がいる場合など、把握していない相続人が存在する可能性もあるのです。
相続人が誰かわからない場合の調査方法として、被相続人の死亡から出生までの全ての戸籍をさかのぼって確認する方法があります。
被相続人に離婚した前配偶者との間の子や、認知した隠し子がいる場合などは、被相続人の戸籍をたどることでそれらの情報を把握できるからです。
具体的な手順としては、以下のようになります。

  1. 被相続人の死亡時の戸籍謄本(除籍謄本)を取得する。
  2. ①に記載されている、一つ前の本籍地の戸籍謄本を取得する
  3. ②に記載されている、一つ前の本籍地の戸籍謄本を取得する(これを被相続人の出生時の戸籍謄本まで繰り替えす)

たとえば、被相続人の出生から死亡までの本籍地として、A(出生時)・B・C(死亡時)の3つがあるとしましょう。
まずは、死亡時の戸籍謄本Cを取得します。すると、一つ前の本籍地Bが記載されているので、その情報に基づいて戸籍謄本Bを取得します。
戸籍謄本Bには、被相続人の出生時の本籍地Aが記載されているので、最後に戸籍謄本Aを取得して完了です。

遺産分割協議書に印鑑をもらえない場合はどうする?

相続登記の手続きをするには、遺産分割協議書という書類が必要です。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で取り決めをした内容(誰が何を相続するかなど)を記載した書類です。
遺産分割協議書に決まった書式はありませんが、遺産分割協議書には認印ではなく実印(印鑑登録した印)を使用しなければなりません。
実印が必要だと民法に規定されているわけではありませんが、相続登記や預金の払い戻しの手続きをするには、実務上実印が押された遺産分割協議書が必要だからです。
遺産分割協議が成立するには相続人全員が同意する必要があるので、遺産分割協議書も相続人全員の実印が必要です。
相続人のうち一人でも実印が欠けている場合は、遺産分割協議書の効力が認められないので注意しましょう。
遺産分割協議の取り決めに反対しているなど、実印を押してくれない相続人がいる場合は、そのままでは遺産分割協議書の効力が認められません。
説得に応じて押してくれればよいのですが、どうしても応じてくれない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをする必要があります。
遺産分割調停とは、どのように遺産を分割するかについて、調停委員という第三者を交えて話し合いをして決める裁判所の手続きです。
遺産分割調停が成立すれば、調停で取り決めをした結果に基づいて、相続登記などの遺産分割の手続きができるようになります。
遺産分割調停が成立しなかった場合、どのように遺産を分割するかを裁判官が判断する、遺産分割審判という手続きに自動的に移行します。

自分の土地にするために、相続人による時効取得は可能?

遺産分割協議が成立しないと遺産を分割できないので、遺産である土地は相続人全員が共有している状態になります。
所有の意思をもって一定期間土地や建物などを占有した場合に、所有権を取得できる制度を時効取得といいます。
それでは、相続人全員の共有となっている土地について、相続人の一人が長年占有することで、時効取得によって自分だけのものにできるのでしょうか。
結論から言いますと、時効取得によって相続人の一人が単独で所有権を取得できる場合はありますが、例外的なケースに限られます。
時効取得が認められるには、自主占有(所有の意思をもって占有を開始したこと)であると認められる必要がありますが、相続人の場合は、判例によって以下の要件を満たす必要があることが示されています。

  • 自分だけが単独で相続したと疑わず、そう信じることに相当の理由があること
  • 不動産を現に占有していること
  • 不動産にかかる公租公課(税金など)を負担していること
  • 他の相続人が異議を述べていないこと

要件として特に難しいのが、自分だけが単独で土地を相続したと誤信しており、かつそう信じることに相当な理由があることです。
すなわち、相続人同士で土地を共有している状態だと知っている場合には、自主占有が認められないので、時効取得はできないのです。
いずれにせよ、相続人が共有している土地について自主占有が認められるのは、例外的な場合に限られるということです。

まとめ

数次相続においては複数回の相続登記が必要なのが原則ですが、単独相続が続いた場合には、例外として中間省略登記が可能なケースがあります。
遺産分割協議をするには誰が相続人かを確定する必要がありますが、被相続人の戸籍を死亡から出生までたどっていく方法が有効です。
相続人が共有している土地について、相続人の一人による時効取得が認められるのは、例外的な場合に限られます。
相続における不動産の名義変更について悩みや疑問がある場合は、放っておくと相続手続きが進まない可能性があるので、早めに専門家に相談することをおすすめします。

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