不動産の相続登記
(1)不動産の相続登記はしないといけない?
民法では、相続は、死亡によって開始する、と規定されています。例えば、お父さんが亡くなられて、お母さんとお子様が2人いらっしゃる場合には、お母さんとお子様2人が相続人となります。では、次のようなケースの場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
上記の例で、お父さん名義の土地と建物があるとします。ここは実家であり、お父さん亡き後は、お母さんがお1人で住んでいらっしゃいましたが、駅から遠い立地のため、高齢のお母さんはすでに駅前のワンルームに移り住んでいらっしゃいます。実家であった土地・建物は、現在は空き家になっているため、このままだとだれも住んでいないのに毎年固定資産税がかかり、また価値も下がっていくため今のうちに売却して、売買代金を相続人3人で分けようという話になりました。そこで、お母さんが、近くの不動産屋さんに相談に行かれました。すると、営業マンは不動産の登記簿を取得してそれを見ながらこんなことを言いました。
「この不動産はこのままでは売ることができないのですよ。」
お母さんは尋ねられました。
「子供が2人いまして、私たち3人が相続人なので、3人が売りたいと言っても売れないのですか?」
すると、営業マンはこう答えます。
「いえ、この不動産が売れないという意味ではないですよ。このままでは買主さんが見つかっても、相続人様の名義に登記を変更しないと売却をすることができないということなのですよ。」
このような相続登記をしていない不動産の売却を希望されるケースは非常に多く見られます。この場合には、まずは相続人名義に相続登記をしなければならないのです。ここで、名義を誰の名義にするかという問題に直面します。相続人3人の名義にすると、売却する際に3人が契約しなければならなくなるため、相続人の話し合い(これを「遺産分割協議」といいます)で、どなたかおひとりの名義にすることで、売却手続きにおける負担をへらしたいというご要望をいただくこともあります。しかし、不動産を売却し利益が出た場合には、譲渡所得税という税金が課税されますので、どなたの名義にするかにより、譲渡所得税の額が変わってくることがあります(譲渡所得税は税率が高いため、数百万単位で税金が変わる場合があるので要注意!)ので、誰にも相談せず、素人考えで名義を変えてしまって思わぬ損をしてしまった、という方のお話を何人もうかがっております。
色々なことを考慮して、相続不動産を売却するという目的を果たすために、相続登記をしなければいけません。今のところは、相続登記をしないまま放っておいても罰金が来たりすることはありませんが、このたび相続登記の申請を義務化し、一定期間内に相続登記の申請がされない場合には罰金がかせられる法案が国会で成立しました。
相続登記の義務化の背景にはどのような理由があるのでしょうか。上記の相続関係の例では、お父さんの名義の土地と建物があり、相続人が3人だけであるため、あまり問題になることはありませんが、これが山林・田・畑であり、名義人がひいおじいさんであったようなケースを考えてみましょう。山林は土地の評価額が数千円ということも多くあります。数千円の土地の名義をご自身がもらうことを考えてみるといかがでしょうか。山林や耕作放棄地(田・畑)を相続登記したとしても、はたして買ってくれる人はいるのでしょうか。場所にもよりますが、かなり難しいのではないかと思います。であれば、長い間放っておかれることも理解できるかと思います。また、長い間放っておくと、どんどん相続人が増えていき、もはやだれが相続人で、どうやって連絡を取ればいいかもわからなくなっていますよね。このようにして、日本には実質的な所有者不明の土地が増え続けてきました。土地の有効活用を考えたり、土地開発を推進しようとしても所有者がわからない以上、どうにもならないわけですね。そこでこのような誰が相続人かもわからないような土地をなくすためには、早いうちに相続登記をしておく必要があります。
この法案は、まだ実施日は決まっていませんが、2024年中には施行されることになっています。あと3年ほどですね。
では、話を一般的な相続登記のお話に戻しまして、相続登記をするためには具体的にどんなものを用意する必要があるのかを見ていくことにしましょう。
(2)具体的な相続登記の手順とは?
相続登記をすることになった場合、何から始めればよいのでしょう。順に見ていくことにします。
①亡くなられた方(「被相続人」といいます)の生まれた時から亡くなられるまでの戸籍謄本をすべて集めます。
⇒戸籍は、まず生まれたときに親の戸籍に入ります。そして次に例えば、結婚すると夫婦の戸籍を作成します。そのほかにも、本籍地を変更したり、法律により改製されたりすると、その都度新しい戸籍が作られますので、死亡の記載のあるものから順にさかのぼって収集していきます。
②すべての相続人で話し合いをします。
⇒相続人の全員の名義で法律に定められた相続分通りに登記する場合は、話し合いは必要ありませんが、遺言書が遺されていない場合で、相続人のうちの1人の名義にしたり、法律に定められた相続分以外で相続登記をしたりするには、話し合い(遺産分割協議)をし、「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。この遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印で押印したのち印鑑証明書をつけなければなりません。この印鑑証明書は3か月などの期限はありませんので、印影と住所が変わっていなければ古いものでも構いません。また、相続人全員が被相続人より長生きしていなければ相続人にはなれませんから、被相続人の死亡日以降に発行された相続人のそれぞれの戸籍謄本も必要となります。
③被相続人の住民票の除票を取得します。
⇒登記簿上の被相続人の住所氏名と住民票の除票に記載された住所氏名が一致しなければなりません。ただ、過去に登記したのちに住所を移転したなどの事情もあると思いますので、これまでの住所の変遷をいくつか証明するためには、「戸籍の附票」を取得するといいですね。「戸籍の附票」とは、Aという場所に本籍地を置いている間に何回か住所を移転した場合には「戸籍の附票」を取得することで、原則としてAに本籍を置いていた際の住所がすべて記載されているものが発行されます。ただし、基本的に除籍後5年経過すると役所は戸籍の附票を廃棄するので、その場合には登記実務上は、被相続人が登記した際の「登記済権利証」を合わせて添付することになります。
④相続する方(名義を取得する方)の住民票を取得します。
⑤不動産の評価額が記載された「納税通知書」または「固定資産評価証明書」等を用意します。
⇒登記の申請をするには、登録免許税(印紙代)を支払わなくてはなりません。
相続登記の登録免許税は固定資産評価額の1000分の4です。例えば、不動産の価格が1000万円であれば、1000分の4、すなわち4万円の印紙代を支払う必要があります。
その登録免許税の計算の根拠として、不動産の評価額が記載された「納税通知書」または「固定資産評価証明書」等を添付することになります。
上記のような書類について収集することは、役所に何度も通ったりしなければならないため、かなりの時間を要する作業となります。司法書士に依頼することで、印鑑証明書を除き、登記に必要な様々な書類は代わりに取得してもらえるので、楽で確実に早く登記の手続きが完了します。弊所は相続に強い専門家が適切にアドバイスいたします。どんな些細なことでも無料にて相談が可能です。いつでもお気軽にご相談ください。