相続登記をしないと・・・
こんにちは、司法書士の樋渡(ひわたし)です。
最近、長年相続登記をやっていなかったという土地・建物の名義変更のご相談が増えてまいりました。昨今のニュースでも報じられているように、2016年度の地籍調査によると、登記簿上の所有者不明土地の割合は約20%、面積は九州本島を上回る約410万haに上るとみられ、2040年には※所有者不明土地は北海道の面積に迫る約720万haまで増加すると推計されています。何代も前から相続登記手続をしないままになっている場合が多く、非常に相続関係が複雑になっている場合があります。
※所有者不明土地とは・・・
不動産登記簿等の公簿情報等により調査してもなお所有者が判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地のこと
特に、東日本大震災の復興整備事業の推進にあたり、この『所有者不明土地』の問題が顕在化してきました。用地取得の困難さは事業推進の妨げとなっていました。東日本大震災後に復興で土地の所在者が不明で開発がすすまなかったという観点から政府は相続登記名義変更の義務化にのりだしました。
2020年10月現在、相続登記の義務化に必要な法改正案が法制審議会で検討されており、今後の実施は確実で、早ければ今月末から行われる予定の臨時国会に提出され、成立すると2020年秋~2021年早春の間に新不動産登記法が施行されて義務化後の運用が始まるといわれています。
そして法務局では長期相続登記がされていない土地について、それを解消するための作業が進められています。この作業は、自治体の要請により、30年以上相続登記がされておらず、所有者が不明になっている土地を抽出し、その法定相続人を調査し、法定相続人の一覧図を法務局に備え置くこととするものです。
この作業が完了した土地については、登記簿に長期相続登記が未了である旨の付記登記がなされ、調査で判明した相続人に対して、相続登記を促す通知が送付されます。
2019年秋頃より順次通知が送付されているようです。下記内容の通知が来た場合のご相談もできますので、ご連絡ください。
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この度、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)第40号に基づき、○○法務局に調査した結果、下記の土地について、所有権の登記名義人が亡くなられているものの、名義がそのままの状況となっており、その後も長期間にわたり相続登記等がなされていないことが判明いたしました。
つきましては、当該土地の登記簿上の少輔者の法定相続人(戸籍等によって確認しています。)である貴殿に対し、その旨を通知いたします。
そもそも相続登記の義務化とは
「故人の葬儀後すみやかに不動産登記の変更をすることを義務づける」ということです。
義務ですので、罰則が発生することも予想されます。
相続登記義務化後の罰則については、今年8月に行われた審議で「過料5万円または10万円」とする案が検討されています。ただし一律で過料に処されるわけではなく、何らかの「登記できなかった正当な理由」があれば免除される予定です。
相続登記の際に必要な手続きの主な流れは
1遺言書の確認、2相続人の確認、3遺産分割協議、4法務局へ登記変更となります。
1、遺言の確認
相続手続きを進める前に、故人の遺言の有無を確認する必要があります。
遺言が執行されない場合も多くありますので、注意が必要です。
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2、戸籍等の収集
亡くなられた方の相続人は誰なのか。相続人と思っている人が本当に相続人なのか調査して、相続人を確定します。具体的には、故人の出生時から死亡時までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍等をそれぞれの本籍地の役場から収集して調査します。2代、3代前の戸籍も必要になりますので、非常に煩雑な手続きの一つです。
この戸籍収集の作業が一番大変な作業になることが多いようです。
私が依頼された案件の中には戸籍収集をすると相続人が70人ということもありました。
また、相続人の中に海外在住の国籍の方や未成年者がいると非常に手続きが困難となります。海外にはほとんどの国で戸籍の制度がなく、印鑑という制度がないため、公証人等の証明が必要になります。未成年者であると、相続人ではない特別代理人を選出しなければなりません。
専門家にお任せいただけましたら、戸籍の収集作業に貴重な時間を割くことなく、確実・スムーズに相続手続きを進めることができます。
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3、遺産分割協議
相続する不動産の数及び金額について、固定資産評価証明書、名寄帳、公図、登記事項証明書を収集し調査します。
不動産名義を誰の名義にするか、相続人様の間で話し合いをしていただきます。
遺産分割協議書を作成し、相続人全員分のすべてに署名及びご実印で押印して遺産分割協議ができあがります。
この遺産分割協議書は相続税の申告が必要な場合には税務署に提出する書面ですので、厳格な書面を作成することが要求されます。相続登記に精通した専門家へぜひお任せください。相続に精通している専門家であれば、税金や二次相続を考慮した相続方法についても考慮した遺産分割についてもご提案をすることが可能です。
4、法務局に提出する登記申請書類の作成、登記
相続登記に精通した専門家が法務局に提出する登記申請書類を作成し、法務局へ提出します。
登記は専門的な知識がないと時間がかかる作業です。
ここで改めて、義務化前でも相続登記をしないことでのリスクを説明しておきます。
(1)売却ができない
相続人であっても、亡くなった方名義の不動産をそのまま売却することはできません。必ず相続登記をしなければなりません。
(2)損害賠償請求の可能性がある
登記名義人が亡くなった人のままでは、土地建物の修繕業者との取引すら不可能です。長年メンテナンスされていない不動産は荒廃し、倒壊したり植木の枝葉が散乱したり、台風で瓦が飛ぶなど、近隣に損害を与える可能性があります。万一の場合は、近隣住民と自治体によって相続人の捜索が行われ、やがて居所が突き止められて原状回復等の要求や損害賠償請求が行われてしまいます。
(3)相続人がどんどん増えていき、協議が困難に
相続が発生して、放置している間に、相続人のうちの誰かが亡くなると、その相続人の権利は、その妻や子供が相続します。
その後、その妻が別の男性と再婚し、死亡すると、妻の権利はその再婚相手が相続します。
こうして見ず知らずの相続人がどんどん増えていくことになります。
遺産分割協議で相続登記をする場合、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になります。
相続人全員が協力的であればいいのですが、そうでない場合、とても大変です。最悪、裁判になるケースもあります。
相続人が多くなるほど、相続登記が難しくなります。
(4)不動産を差し押さえられる可能性がある
相続人の中に、借金や税金の支払いが滞っている人がいる場合、債権者に不動産の相続分を差し押さえられる可能性があります。
相続登記の済んでいない不動産の持分も債務者の財産です。
相続した不動産を、相続登記をしないまま放置していたら、いつの間にか差し押さえられていたということもあります。
(5)相続人が認知症になる可能性がある
遺産相続発生時には、認知症の方がいない場合でも、相続手続きをしないで放置するうちに、相続人のひとりに認知症が発生し、慌てて相談に来られるケースはよくございます。
その場合は認知症の方は、自分で遺産分割協議書にサインできませんので、家庭裁判所で、成年後見人の選任を申し立てる必要があります。
成年後見人は一度選任されると、通常は、亡くなってしまわれるまで、成年後見人を外すことができません。
相続登記は、時間が経てば経つほど複雑になり、費用も時間もかかるようになります。
後悔しても後の祭り。相続登記は早めにされることをお勧めします。やるべきことを先送りするほど、将来手続きができなくなるリスクが高まります。 思わぬ出費を被ることにもなりかねません。せっかく先人が残してくれた遺産ですから、きちんと相続手続きをして、さらに後世へ伝えていく、という考え方はいかがでしょうか。
当センターにご相談いただけましたら、相続登記からご売却の相談までワンストップで解決ができます。お気軽に当事務所までお問合せください。